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2014年5月27日

奈良市長 仲川げん殿

市有財産である旧都跡村役場取り壊し計画についての公開質問状

市からの回答

「近代建築・旧都跡村役場を活かす会」

(共同代表=奈良教育大学教授川上文雄、ジャーナリスト浅野詠子)

謹啓

私たちは、旧都跡村役場(以下、本建物)の取り壊しに反対し、市政振興の大切な資源として保存と活用を探る市民グループです。市の取り壊し計画を知り、以下の質問状を提出いたします。ご多忙とは存じますが、市民の懸念に対してわかりやすく説明するという行政の責任を果たしていただきたく、6月10日までにご回答下さいますよう、よろしくお願い申し上げます。回答文書は市役所まで取りに伺いますので、携帯電話090-7110-8289(浅野)までご一報下さい。

ご回答頂いた内容はマスコミに発表する予定です。

  1. 市は本建物について、耐震性の問題、利用者の安全性の問題を特に懸念しておられます。専門家によれば、近年では比較的容易に耐震性の向上を図る補強が可能になってきているようです。まず当面は応急の耐震工事によって利用者の安全を確保し、将来的に本格的な保存のあり方について検討していくことが、取るべき道ではないでしょうか。壊してしまっては取り返しがつきません。お考えをお教え下さい。

  2. 奈良県教育委員会は2011年にまとめた調査報告書『奈良県の近代和風建築』のなかで、本建物について「最小規模の庁舎と議事堂が、ほぼ当初のままセットで残っている点で、貴重な存在」と記録し、歴史遺産、文化財としての価値を認めています。本建物の価値について市長は県教委報告書の評価に理解と共感を持っておられると考えてよろしいでしょうか。また、「理解と共感」をお持ちの場合は、今回の決定の過程において、本建物を取り壊し、新しい集会所に建て替えることと、文化財や歴史遺産として保存・活用していくことの意義と、どう比較検討されたのかお教え下さい。

  3. 解体して新しい建物を作る方が、修理保存して活用するよりも費用が少ないとお考えのようですが、「保存・活用」の意義を「利益」と考えてコスト計算をするという考え方はできないのでしょうか。

  4. 奈良市は2012年5月、「近代遺産をはじめとする地域に埋もれた資源を再発掘し、魅力ある観光地づくりを目指す」と、佐賀県武雄市との共同事業の発表において表明しています。共同事業を発展させるうえでも、本建物の存続の可能性を探るのが市政の本筋ではないでしょうか。さらに言うならば、観光のみならず、福祉、教育、その他いくつもの政策課題にかかわって、本建物を保存し、その有効活用を追求するということが武雄市との共同事業の趣旨にも叶うことではないでしょうか。お考えをお聞かせ下さい。

  5. 公費で建築され、公費で維持管理されてきた長い歴史をもつ本建物は、都跡地区の一財産ではなく、奈良市民みんなの財産、未来の奈良市民に受け継ぐべき地域資源と位置づけることができます。県教委の報告書もそれを示唆しています。自治連合会が地元の代表として新しい集会所の建設を求めることは理解できなくもありませんが、本建物の存続を左右することまではできないと考えます。地元が集会所を求めていることと、本建物を今後どうするかは本来別の問題であり、分けて取り組むべき課題ではないでしょうか。お考えをお聞かせ下さい。

  6. 上記「5」のように、本建物が奈良市民みんなの財産という要素を持つのであれば、市がそれを取り壊そうとしていることを多くの市民が知らないことは問題です。取り壊しの計画を広く市民(市民団体、職能団体)に知らせ、熟議と合意形成の時間を頂くことは可能でしょうか。その時間のなかで、いろいろな英知が集められ、都跡地区の住民のみなさんにとってもよりよい解決策が見出されるのではないかと思います。そのような時間は取れないというのであれば、その理由をお示し下さい。

質問は以上です。市長の大英断を期待します。

どうぞよろしくお願い申し上げます。